ガス絶縁電力機器中不平等電界下における

インパルス絶縁破壊メカニズムに関する研究
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[研究背景]
 現代社会における電気エネルギーの安定的な供給は必要不可欠である.今日の電力流通における中心的役割を担っているSF6ガス絶縁開閉装置(GIS)においては,その長期間運転によって機器内部に金属異物が混入することがある.このとき機器内部には局所的な高電界が生じ,GISの絶縁性能が著しく低下することが機器を運転する上で問題となっている.

実器内部に混入した金属異物に雷サージ電圧が侵入すると,異物先端にて微弱な部分放電(PD)が発生し,リーダ放電という長く進展しやすい放電形態に転移することでPDが進展し,最終的に絶縁破壊(BD)に至るといわれている.しかしながら,異物先端で発生するPDからBDまでの進展速度がナノ秒オーダの超高速現象であることからその測定が困難であり,PDの発生から進展を経てBDへ到達するメカニズムは解明されていない.

以上の観点から,本研究においてはPDに伴う微弱な電流や発光を取得するための測定回路系から,PDの進展を測定するために超高速時間分解能を備えたストリークカメラを含めた3台のカメラからなるPDの超高速・高感度5者同時測定システムを構築することで,極めて微弱かつ高速なPD現象の測定を行っている.そして,SF6ガス中不平等電界下におけるインパルスBDメカニズムを定量的に明らかにすることで,ガス絶縁電力機器の合理的設計や絶縁診断技術確立に貢献することを目指している.

これまでに,金属異物先端におけるPD(ストリーマ放電)からリーダ放電への転移メカニズムや,リーダ放電の進展からBDへ到達するメカニズムについて,超高速PD現象測定システムを用いることで電気的・光学的な諸データを取得してきた.PD電流や発光像から得られる放電の進展長といった基礎データから,放電の発光スペクトルといった分光学的なデータまで,様々な観点からPD現象にアプローチすることで,これまでは困難であったPD内部におけるエネルギーや放電先端における電界が放電の進展に及ぼす影響といった検討を本研究において行っている.

[発表実績]

(1)     Soh Yoshida, Hiroki Kojima, Naoki Hayakawa, Fumihiro Endo, Hitoshi Okubo, “Light Emission Spectrum Depending on Propagation of Partial Discharge in SF6  Jun 8-11, 2008, ISEI

(2)     吉田 聡小島 寛樹早川 直樹,遠藤 奎将,大久保 仁,「SF6ガス中絶縁破壊に至るリーダ放電の測定9/24-262008,電気学会電力・エネルギー部門大会

(3)     吉田 聡小島 寛樹早川 直樹,遠藤 奎将,大久保 仁,「SF6ガス中リーダ放電進展に及ぼす解離性生物の影響」3/15-172008,電気学会全国大会

(4)     吉田 聡小島 寛樹早川 直樹,遠藤 奎将,大久保 仁,「SF6ガス中部分放電進展に伴う発光スペクトルの変化11/26-272007,電気学会放電・開閉保護・高電圧合同研究会



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